インテリム人材が企業と人材にとってwin-winである理由

クラレザパートナーズ | 記事

要約: グローバル企業ではここ数年、インテリム人材を単に臨時的な人員確保手段としてではなく、様々な人材ニーズに対応するための新たな手段として幅広く活用するようになっている。一方、実績と経験を重ねた人材にとっても、インテリム人材として働くことには自身の裁量や成長、キャリア形成といった点でメリットがある。

インテリム人材(Interim Talent)とは、業務委託契約に基づき、企業の重要なポジションを臨時的に担う外部の専門人材のことを言う。海外では、退職や休職等に伴い重要なポジションが空席になった際に後任者が採用できるまでの間、外部の人材会社やコンサルティング会社に経験豊富なインテリム人材の提供を依頼することが一般的だ。

近年、人材獲得競争の激化や新型コロナウィルスの発生を契機とした労働者の価値観の変化により、企業は人材戦略を見直し、インテリム人材を単に臨時的な人員確保手段としてではなく様々な人材ニーズに対応するための新たな手段として、より幅広く活用する傾向がみられる。

なぜ企業はインテリム人材の活用を拡大しているのか?

その理由の一つは、多くの企業が人材不足に苦しんでいることだ。マンパワーグループによる2023年人材不足に関する調査によると、77%の企業が必要なスキルを持つ人材の確保が困難であると回答している。これは17年ぶりの高水準に達し、2015年(38%)の2倍以上の数値となっている。特に日本市場では、GDPが世界第3位であり、様々な産業にとって魅力的な市場であるにもかかわらず、英語を話す人材の不足や労働人口の長期的な減少傾向により、多くのグローバル企業が優秀なリーダーやプロフェッショナルの採用に苦戦している。

その一方で、COVID-19の大流行をきっかけとして、人材側にも大きな変化が起こった。働き方や生き方に関する価値観が変わり、特に市場価値の高いスキルや経験を持つ人々の間で、従来よりも柔軟で裁量のある働き方を望む傾向が強まっている。企業はインテリムの仕組みを使うことで、こういった高スキル人材を活用することができる。

もうひとつの理由は、企業が自社の組織や人員数に柔軟性を求めていることだ。変化の激しい昨今の経営環境において、企業は状況に応じて労働力を調整し、次の時代に必要なスキルを持つ人材を確保する必要性が高まっている。しかし、事業や業績が変動したり必要なスキルが変わったりするたびに、余剰となった人員の削減と新たな正社員の採用を繰り返すという手法は、もはや通用しない。このやり方は、採用や人員削減のコストが大きいという問題に加え、労働市場における企業ブランドの低下を招き、人材の採用や維持がますます難しくなるという弊害がある。また別の方法として、既存の従業員のリスキリングを奨励・支援することもできるが、すべての従業員が新たなスキルを習得する意欲と能力を持っているとは限らない。

日本では特に、従業員が同じ会社で働き続けることを良しとする文化があることで、いわゆる「健全な新陳代謝(healthy turnover)」が起こりにくく、多くのグローバル企業が自社組織の硬直性に悩まされている。他国に比べて高額な採用コスト(年俸の30%~40%)や人員削減に対する法的なハードルも相まって、ビジネス環境の変化に応じて正社員の人数を迅速に調整することは非常に難しい。インテリム人材の場合は、契約期間を柔軟に設定できるため、自社に新たな専門知識や経験を持つ人材を加えつつ組織に変化を促したいという企業側の需要を満たす仕組みと言えるだろう。

では人材側にとっては、インテリムで働くことにどのようなメリットがあるだろうか?

前述したように、新型コロナウィルスの発生は人々が仕事や人生に求めるものに大きな変化をもたらし、より柔軟な働き方を求める人々は、正社員から起業家やフリーランスといったキャリアへの移行を選択している。このような働き方は、収入面では正社員ほど安定しないかもしれないが、働く時間や場所、どのような仕事をするかを決める自由度は高い。特に、リーダーやプロフェッショナルとして優れた実績を持ち、変化に適応できる能力を持つ人材は、雇用の安定よりも自由度や自律性を相対的に重視する傾向にあるため、インテリム人材として働くことは魅力的な選択肢となるだろう。

インテリムとして働くことは、個人の成長やキャリア開発の面でもメリットがある。変革の時代と言われる今日のビジネス環境において、変化に対して素早く適応する能力やイノベーションを推進する力は、企業が重要なポジションを任せる人材を採用するにあたり必須のスキルとなっている。複数の異なる企業、業界、職種等で経験を積むことがこういったスキルの育成に効果的であることに企業は気づいており、人材戦略にも取り入れ始めている。インテリム人材として様々な企業で働くことは、このようなリーダーシップの特性をさらに伸ばす絶好の機会であり、人材市場における自身の価値を高めることにもなる。


従来、企業は雇用の安定に加え福利厚生等が充実した正社員という条件を提示することで、優秀な人材を惹きつけてきた。しかし、仕事や人生に対する価値観が変化し多様化している今、正社員という雇用形態が、今後も優秀な人材を惹きつけるための最善の方法であり続けるとは限らない。新しい時代の人材戦略は、正社員とインテリム人材のような非正社員との組み合わせであるべきだろう。それは企業だけでなく、より自律的で柔軟な働き方を通じて成長しキャリアを築きたいと望む人材、双方にとってメリットがある仕組みと言えるはずだ。

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