フリーランスでありながら企業の重要ポジションの役割を担うインテリム人材。今回、外資系メーカーにて人事ビジネスパートナー(HRBP)を約1年間に渡り担った加藤智さんに、その職務を振り返ってもらうと共に、インテリム人材として働くことへの感想や心得をうかがった。
--1年間のHRBP業務、お疲れさまでした!まずは、どのような業務を行ってきたか簡単に振り返っていただけますか。
加藤:今回2つの事業部でHRBPの業務を行いました。1つ目の事業部はHRBPが不在ということで、その業務を代行しました。事業部付けのHRBPですね。
業務内容は人事全般を広く担当しました。入社から退社までと、あとは特に採用しないといけないポジションがいくつかあったので、そこの部分。元々、人事の方が複数いらしたところが 一気に抜けてしまったという状況だったため、日本全体の人事との連携であったり、イタリアのグローバル人事との橋渡し、会議体の出席なども含め、かなり広範囲の業務に携わりました。
もう1つの事業部は、前任の方が退職されるということで、そこを引き継ぐ形でした。数ヶ月は両事業部のHRBPを兼任していて、その後は新しい事業部のほうだけ専任で。業務内容も基本的には同じなのですが、そちらの事業部はもう少し規模が小さいというのと、法人が別になっていること、グローバル人事がイタリアではなくて中国にいること、などの違いがありました。また直近では、日本からアメリカに移動される方が出たので、その方のサポートですね。アメリカ人事とのやりとりとか、そういったプロジェクトもありましたね。
--人事に関わる様々な業務を本当に幅広く担ってこられたのですね。今回クライアントさんは、加藤さんのどういった部分に、特に期待をされていたと感じますか?
加藤:今回インテリムということで、代行というか不在期間を埋めるという役割ではあったのですけど、周囲の期待としては、完全にもう中の人、1人のHRBPとしての役割でした。
見た目としてはメールアドレスに”external”っていうのが入ってはいるのですけど、それ以外はもう完全に入り込む形なので、正直なところ社外の人間であることを知らない方も、たくさんいらっしゃったと思います。
--本当のことを聞いたら「あれ、そうだったの?」と言われそうな感じですか。
加藤:はい、多分ほとんどの方がそういう反応をすると思います。完全に社内の人として扱われるし、期待されるということですね。
例えば、事業部のリーダーシップの会議に入ってレポートしていくとか、APACの事業部のところでも、いきなりKPIを発表していくとかですね。離職率や採用状況、あとは皆さんの有給取得状況とか、もう数字をパッと集めて、パッと事業部を代表して話していくっていう感じですね。本当にすぐ対応して、すぐパフォーマンスを出さないといけないという状況でした。
あとは採用しないといけないポジションがいくつかあったので、そこも期待が大きかったです。人事全体と並行して採用もやらなきゃいけないということですね。あとは人事が不在になっていた関係で、やはり本社やグローバルとの連携でこぼれるところがかなりあったようで、それを拾ってまた繋いでいくみたいな部分であったり。
--本当に業務範囲も幅広いですし、かつ短期間で入ってすぐに即戦力として期待をされるというのは、やはりなかなか大変な部分がありそうですね。
加藤:そうですね、単に業務経験だけでなく、順応性が問われると思います。今回、製造業ということもあり、独特の作法や企業文化があるように感じました。外資系企業で上位層は外国人のマネジメントが多いとはいえ、顧客やサプライヤーは日系だったりして、そういった相手と連携して製品を仕上げていかないといけない。色々なカルチャーが混在している状態でした。
だからあまりにも外資系のスタンダードを求めてもいけないですし、クライアントの作法や文化をリスペクトしながらというところが大変でした。最初は様子をうかがいつつ、慣れていくことを心がけました。
あとは結構、社内人事ツールなどグローバルで連携しているものが多く、前任者がいない中で、そういった様々なクラウドツールの使い方を習得して作業を進める大変さもありました。
--いろいろな面で適応力が必要になりそうですね。
加藤:はい、かなり求められると思いますね。
--加藤さんご自身が、特にこの部分で貢献できたと思うのは、どういった部分ですか?
加藤:そうですね、やはり1つは採用のところですかね。時間が経つとすぐフリーズしてしまうというか、予算やヘッドカウントがすぐ消えてしまうような環境なので、承認を得た採用を早めに決めていかないといけないというプレッシャーはかなり感じました。
特に最初の事業部ではHRBPの後任の方を見つけて引き継ぐという大きなミッションがあったのですが、なんとか年内に採用できて、その方にバトンタッチして。その方も自分の部下をまた採用して、という形で人事チームを再構築することができました。営業と人事の2名を3ヶ月の間に採用できましたし、皆さんには喜んでいただけたのかなと思っています。
--はい、非常に喜んでいらっしゃいました。今回の契約満了の際、一緒に仕事をされた人事メンバーの皆さんが寄せ書きの色紙を作ってくださったそうですね。
加藤:そうなんです、とても嬉しく思っています。
--次のご質問ですが、インテリムならではのやりやすさとか、あるいは逆に何か難しかった点とかあれば ぜひ教えてください。
加藤:やりやすさでもあり、多分やりにくさにもつながると思うのですけど、自分がやるべきことを明確にしないといけないという点でしょうか。
これを絶対やらなきゃいけないと割り切って、大事なところに集中できるというか。時間がフルタイムのコミットではないので、もう今できるリソースはこれしかなく、絶対いつまでにこう決めようとか、そういった覚悟を決めやすい。
それの裏返しで使える時間が限られるので、自分で追える部分が限られてしまう。フルタイムで時間が制限なく使えると、かなりいろんなことまで自分で手を出そうとすると思うのですけど、それはできないわけです。手が回らないところは他の人にお任せするなど、切り分けをしないといけない。
あとは教えてもらうことも大事ですね。詳しい人に教えてもらう時間を作って、パッと終わらせちゃうとか。そういうメリハリは非常にあると思います。
本当は自分で触ってゆっくり学びたいと思っても、恥をしのんで「教えてください」って言って、そこで一緒にやって終わらせるようにしていかないと、なんで聞かなかったのってなってしまう。
--時間がもったいないよね、と。
加藤:そう、そういう話になってしまうわけです。なので、そこは割り切らなきゃいけない。人に任せたり頼ったりする部分との線引きをして、自分が注力すべきミッションに集中する。溢れていくこともたくさんあって、目をつぶらなきゃいけないこともあるので、完璧主義の人だと結構つらいと思います。
--確かに、やりやすさと難しさの両面がありますね。それでは最後に、今後インテリムとして働く方に対して何かアドバイスがあればぜひお願いします。
加藤:先ほどの話で言うと、些細なことでも人に聞くのが大事だと思います。その会社に特有の作法や流儀に関しては、分からないことばかりの状態からスタートするわけですし、自分の過去の経験や常識を元に、知ったような感じでやって間違ってたりすると、大変な迷惑をかける可能性があります。
そして人に聞く際のツールやタイミングなど、コミュニケーションの取り方にも気を使いました。チャットやメール、電話など時々に応じて正しいチャンネルを使っていくとか、相手に応じて時間の押さえ方を工夫したりとか。時間が潤沢に使えないので、待ち時間を作らないように、かなり意識しました。
あとは、やはりその会社の社風をよく理解して振る舞うというところは大事かなと。おそらく危険なのはプライドが邪魔をして「昔はこういうやり方でやってたんだ」とか「こうあるべきなんだ」とか「自分はこれで成功してきたんだ」みたいなことを振りかざしちゃうともう衝突してしまう。
--なるほど。その分野の即戦力として経験を活かしてほしいと期待される一方で、その会社の文化とかそういうものには、ちゃんと合わせていかないといけない、と。バランス感覚が求められそうですね。
加藤:バランス重要ですね。外部顧問やアドバイザーではないので、お客様っぽくは振る舞えないですし、コンサルタントのように自分の色を出しすぎる必要もない。そこの付加価値ってあんまりいらないと思うのですよね
なので、現状のやり方に問題がなければ、なるべく真似をしていく。期待されている役割に対して、どうパフォーマンスを上げるか、価値を出すかということに集中するのが大事だと思いました。
--大変なミッションを1年間に渡って担当いただいたと、改めて実感しております。本日は、貴重なインプットをたくさんいただき、ありがとうございました。
加藤:ありがとうございました!
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