グローバル企業が日本での採用に苦戦するのはなぜか?

クラレザパートナーズ | 記事

要約: 多くのグローバル企業が、重要なポジションを任せることのできる経験豊富な人材を採用するのに苦戦している。その理由は主に、企業側が求めるスキルや経験を持つ人材が、転職市場に限られた人数しかいないためである。このような課題を克服するためには、企業はいわゆるユニコーンを探すのをやめ、正社員以外の人材プールにも目を向けることが望ましい。

「日本で経験豊富かつ優秀な人材を採用したいが、なかなか良い人材が見つからない」、そのような困難に直面するグローバル企業は多い。

日本は経済が過去数十年にわたり停滞を続けているとはいえ、GDPは世界第3位、人口は2023年時点で1.2億人以上の規模があり、日本は依然として多くの産業にとって重要な市場の一つである。しかし、日本市場への参入や事業拡大に失敗するグローバル企業は決して少なくなく、その主な理由のひとつは、質の高い人材の(それどころか要件を満たす人材でさえも)確保が困難なことである。

グローバル企業が日本で人材の採用に苦戦するのはなぜか?

その理由のひとつは、英語をビジネスレベルで扱える人材が少ないことだ。調査によって数値は多少上下するが、日本では人口の約9割が英語を話せないと言われている。国内のある調査会社によると、ビジネスレベルの英語を使える労働者はわずか2.2%しかいない。2022年のEF英語能力指数(EF EPI)によると日本は111カ国中80位であり、2015年の70位中30位、2019年の100位中53位と下降傾向が続いている状況だ。グローバル企業における重要なポジションでは通常、本国とのコミュニケーションのため高い水準の英語力が求められ、必然的に企業はかなり小さい人材プールから候補者を探さなければならなくなる。英語力の他にも、何か希少性の高いスキルや経験を持つ人材を探している企業の場合、要件を満たす人材を見つける難しさは更に跳ね上がってしまう。

もう一つの理由は、終身雇用の文化とメンタリティだ。終身雇用については変化の必要性が叫ばれて久しいが、新卒で入社し、定年まで同じ会社に勤め上げるという慣習は、いまだに市場に広く浸透している。伝統的な日本企業は雇用の安定を提供し、昇格や昇給、有給休暇、年金制度などの人事制度は、新卒入社者を中心とした勤続年数の長い従業員を優遇するように設計・運用されていることが一般的だ。そのため、日本の労働者は企業に入社して一定年数が経つと、転職のリスクを避けるようになっていく。

内閣府の調査によると、54%の労働者は過去に一度も転職した経験がない。また転職経験のある労働者の4人に3人は35歳以下である。つまり35歳以上の労働者が転職するケースは割合としてかなり低く、企業が労働市場で経験豊富な人材を採用することを難しくしている。

重要なポジションにふさわしい候補者を見つける難しさに加え、採用にかかる金銭的な負担が大きいという点も企業を悩ませる要因だ。日本では転職エージェントに支払う紹介手数料は通常、年俸の30%~40%程度であり、需要の高いスキルを持つ人材の場合は更に高い場合もある。これは、年俸の15%~25%の範囲に収まることの多い諸外国と比べると高額である。この採用コストの高さと、採用した候補者がフィットしなかった場合に余剰人員を抱えてしまうリスクが相まって、企業はよほど条件が揃った候補者でない限りは内定を出すことを自然と躊躇してしまいがちだ。その結果、企業はより自信を持ってオファーを出せる候補者が現れることを願って、限られた人材プールの中を探し続けてしまう。

このような課題を克服するために、企業はどうすればよいだろうか?

まず最初にできることは、ユニコーン(実在しない、もしくは非常に稀な人材)を探すのをやめることだ。企業は、人材プールの規模が想像よりもはるかに小さいことを認識した上で、理想的な候補者を探すのではなく、プールの中から最良の人材を見つけることを目指す必要がある。その際、どのようなスキルやコンピテンシーがそのポジションに不可欠なのかを見極めることが有効だろう。一般的には、人格や価値観に関する能力(リーダーシップなど)や言語/コミュニケーション能力は、業界知識などのテクニカルスキルに比べて習得に時間がかかると言われている。採用時には、そういった習得に時間がかかる能力を重視し、テクニカルスキルは入社後に身につけられるよう支援するという選択肢もあり得るだろう。

企業が検討すべきもう一つのアプローチは、正社員として雇用する以外の方法にも目を向けることである。当社の記事「インテリム人材が企業と人材にとってwin-winである理由」に記載したとおり、新型コロナウィルスの発生をきっかけとして、市場価値の高いスキルや経験を持つ人々の間で、従来よりも柔軟で裁量のある働き方を望む傾向が強まっている。企業はインテリムの仕組みを使うことによって、そのような希少な人材を活用することができる。インテリム人材の中には、数か月の契約期間が満了した後に正社員としてのオファーがあれば、それを受諾して企業に残ることを選択する者もいるため、そういったオプションを念頭にインテリムを活用するのも手だ。


多くの業界において、人材は企業の競争力を左右する重要な要素である。グローバル企業が日本市場で成功するためには、日本における言語、文化、商習慣などの独自性を理解している人材を採用することは欠かせない要素であるはずだ。「日本で経験豊富かつ優秀な人材を採用したいが、なかなか良い人材が見つからない」、そのような困難に直面するグローバル企業は、別のアプローチを検討してみる頃合いかもしれない。

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